勇者サイアクダの伝説

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「やはりここは、古き良き伝統的な“おれたたEND”で締めるのが無難なのではないでしょうか?」 まず最初に、タキジリンが意見を出した。 「“俺たちの闘いはこれからだ!”ってやつか……。確かに無難だが……」 「四天王を一人倒したところで、次の大陸を目指して、夕日を背に走り出せば、一応綺麗にまとまりますよ」 タキジリンの意見は一理あったが、カイヌとサルーニャは微妙な面持ちだ。どうやら、タキジリンの意見があまり気に入らなかったようである。 「そうだ。ここはサイアクダの意見を聞いてみましょう」 タキジリンが提案した。 「確かに。今まで空気だったけど、一応サイアクダがリーダーだしな」 「サイアクダは、おれたたENDで良いと思うだか?」 「最悪だ…この世の終わりだ…」 「そこまで強く否定しなくてもいいじゃないですか……」 自分の意見をサイアクダに全否定されたタキジリンは、落ち込んでしまった。 するとサイアクダは、誤解だといわんばかりに、首をブンブン振り始めた。 「タキジリン、なんか違うみたいだぞ」 「そういえば、“最悪だ…この世の終わりだ…”以外は喋れないのでしたね」 「ええい、ややこしい! そうだ、これからは、YESのときは“最悪だ…”、NOのときは“この世の終わりだ…”と答えることにしよう。わかったか、サイアクダ」 「最悪だ…」 「……それは、YESと受け取っていいんだよな?」 サイアクダは、こくこくとうなずいた。どうやら、合言葉を決めたところで、ややこしさは解消されないようである。 「話を戻しましょう。サイアクダ、あなたは、おれたたENDに賛成ですか?」 タキジリンが、再び尋ねた。 「この世の終わりだ…」 「ええっと、これは、どっちなんでしたっけ?」 「NOの方だ」 「語感からも、凄く嫌そうな雰囲気が伝わってくるだな」 事実、サイアクダは、おれたたENDに対してかなり微妙な表情をしていた。 「まあ、そうだよな。台詞が“最悪だ…この世の終わりだ…”しかないまま終わるなんて……」 「あまりにも可哀想ですよね……」 「んだな……」 三人の戦士たちも、さすがにサイアクダに対して同情したようである。
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