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「え?」
勇者の第一声を聞いて、三人の戦士たちは、目を円くした。
「おお、旅の戦士よ。あなたが勇者サイアクダ・コノヨノ・オワリーダなのでありますか?」
キョトンとして動かない三人をよそに、ダムスが問う。
「最悪だ…この世の終わりだ…」
男が答えた。
「おお、間違いない。古の予言の通りじゃ」
「ちょっと待ってくれ、司祭様」
「なんじゃカイヌ、お主ももっと喜べばよかろう」
「むしろ何故あんたはこれをおかしいと思わないのか、俺はそれが疑問なんだが」
カイヌの問いかけに対し、ダムスはキョトンとしている。どうやら、カイヌの言葉の意味がわかっていないようである。
「この人さっきから『最悪だ…この世の終わりだ…』としか言ってないじゃないか」
「そうじゃ。何かおかしいところでもあるか?」
「逆におかしいところしかないだろ。これじゃあ、ただの暗い人じゃん」
「何を言う。勇者サイアクダは、魔王ネガティブの呪いによって、生まれつき『最悪だ…この世の終わりだ…』以外の言葉を話せぬと、予言書にも記されておるわ!」
ダムスのその言葉を聞き、三人の戦士は互いに顔を見合わせた。
「なあ、もしかして、この小説の『最悪だ…この世の終わりだ…』要素って、これしかないのかな……?」
「少し無理矢理すぎませんかね? 公式イベントに参加するんでしょう、これ?」
「こんな取って付けたようなキャラ設定だけで、参加条件を満たしていると言えるんだべか?」
三人は、勇者サイアクダの方をチラチラと見ながら、ヒソヒソと話し合った。魔王討伐の旅が始まるのを待たずして、早くもパーティ壊滅の危機である。
「案ずるでない、戦士たちよ。公式イベントページによれば、参加条件は『一ページめのどこかに必ず“最悪だ…この世の終わりだ…”という文章を入れること』となっておる。つまり、それ以外は全部適当でいいのじゃ!」
ダムスの言葉にこもる謎の説得力に、三人の戦士たちから「おぉ……」と謎の感嘆の声が漏れた。
「さあ行け! 勇者サイアクダと三人の戦士たちよ! 魔王を打ち倒し、この世界に平和をもたらすのじゃ!」
「最悪だ…この世の終わりだ…」
「これ本当に大丈夫かな……」
かくして、勇者サイアクダと三人の戦士たちの冒険の旅が始まった。
これは、最悪でもこの世の終わりでも何でもない、愛と希望に満ちた闘いの物語である。
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