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「そうなら、いいけどさ」
「ソウタ君はなんでここに来たの」
ぱたん、と手から本が机に滑り落ちる。黒々としたソウタ君の目がこちらをじぃっと見てくる。
「手芸部に、新入部員で、男子苦手ーっていう女子が入ってきちゃって。追い出された」
「うわぁ……なぁに、こういったらあれだけど面倒なのね」
「まぁ。どうしようもないし」
ぽとん、と床にあたしのシューズが落ちた。
「どーりでナカちゃんがここに連れてきた訳だー。大丈夫だよ、ここあたししか来ないし。あたし誰かいても平気だし」
「どうして本を読むんだ?」
「うん?」
机の上にだらしなく寝そべった。赤いマフラーと古い文庫本が視界に広がる。
「本を読む、理由ってやつー?」
「そう……」
かちゃかちゃと編み棒が動く音がする。青アザが痛い。前髪を手ですいて、こつこつと机を爪で叩いた。
「理由、でしょうー?あのねー、綺麗に死にたいんだよ」
にへら、と頬が弛緩する。やる気のない笑顔だよね、と友達に指摘されたことのあるあたしの笑顔。やる気のない、笑顔。生きていくことにやる気がないからいけないんだと思う。
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