シャープペンシルと編み棒

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わかるでしょ、という同意を求める言葉はとっても軽いけど。 「ナイフとフォークは美味しいご飯を食べるために使いましょう。間違っても誰かに刺してはいけません。可愛いハイヒールはドレスに合わせてあげましょう。間違っても誰かを踏みつぶすために使ってはいけません……って、ねっ」 きゃはっ、とわざとらしい笑い声をあげる。 「ソウタ君の質問攻めはもうおしまい?」 「最後にひとつ」 あたしが差し出した編み棒を受け取って、なにもなかったかのように編み物を再開しながらソウタ君はあたしに質問をする。 「いま、どんな小説を書いてるんだ?」 「絶望の日のお話しだよ」 予想してたかのように、するりと答えが口から出る。 「とっても素敵な絶望を書いてあげる、つもり」 「ふぅ、ん」 「じゃ、あたし帰るからぁー。窓の鍵だけ見てってね」 「あ、うん」 「また明日も来るといいよ」 ドアの前でくるりと踵で回って、ソウタ君に敬礼をしてみた。こうして見るととても不思議な風景。いつもあたしがぽつりと座ってかたかたとキーボードを叩くだけの孤独の中に誰かがいる。孤独の色の黒い目と服を着た誰かが。誰かが。 「楽しかったから、また来てねっ」
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