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カオリ「準備はおっけー?ハルくん」
再びノックもなしにドアが開いたかと思えば、母さんが小動物のようにひょこっと顔を出す。
ハル「準備はまぁできたけどさ。なんでこんな面倒な準備が必要なんだ?旅行に行くわけじゃあるまいし‥‥‥‥‥‥‥」
カオリ「どこに跳ばされるか分からないから【向こう】に着くまでは、そのリュックの中身が生命線なのよ~?だから大事にね」
え?なんかサバイバル的なヤバい場所なのか!?
カオリ「それじゃあ母さんも準備があるから、ハルくんは横になって目を閉じて、ゆっくりしててね~」
そう言って母さんはニコニコ笑顔で手を振りながらゆっくりと部屋から顔を引っ込めていった。
ハル「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
何も分からん。さっぱり分からん。
手を首の後ろで組み、ベッドに仰向けになって寝そべりそっと目を閉じる。
色々な疑問や不安があるが、何も分からないというのはある意味興味をひかれる要因になる。普段はおっとりとした母さんがあそこまでハキハキと俺に勧めてきた場所だ。
きっと俺の心を揺さぶる何かがあるに違いない。
ハル「あ、そうだ母さん!一ついいか?」
カオリ「は~い?」
部屋越しに母さんの声が微かに聞こえる。
恐らくリビングの方にいるのだろう。
ハル「場所の名前!名前くらい知っておきたいんだけど!」
カオリ「あ~名前?言って大丈夫かな?まぁいっかな~。ハルくん横になってる~?」
ハル「なってるよ!」
カオリ「目閉じてる~?」
ハル「閉じてるよ!」
カオリ「母さんのこと愛してる~?」
ハル「愛して‥‥‥‥‥‥‥あぁ!?」
カオリ「ふふふ。なら安心ね~。そこの名前はね~?」
カオリ『異界ユグドラシルで~す』
ハル「ユグドラ‥‥‥‥‥?はっ!?」
その言葉を最後に母さんの言葉は届かなくなり、突然の睡魔によって俺の意識は知らず知らずのうちに夢の中へと消えてしまった。
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