始まりはすれ違いから

2/7
前へ
/12ページ
次へ
 俺が目を覚ましたのは、日が登るよりも前のまだ暗い時間だった。俺は眠ると必ず7時間後に目を覚ます体質の持ち主なのだ。それはつまり、早く寝ればそれだけ早起き出来るが、夜更かしをすればその分だけ起きるのが遅くなる事を示している。俺がこの時間に目を覚ますのは言わば必然的だった。なぜならいつもより数時間も早く床についたからだ。尤もこれは俺がそういう体質だという前提の話なのだが。 「ん゛ー……」  唸り越えを上げながらゆっくりと体を起こす。と同時に内心ヤバイと思いながら勢い良く首を横に向けた。今の唸り越えで彼女を起こしてしまったかもしれないと思ったからだ。微妙な仲になってしまったとは言え、俺達は別々に寝ようと言ったことは無かった。家が狭く布団をもう一枚敷けないと言うのもあるが、例えスペースがあったとしても俺達はお互いにその案を出さなかっただろう。特に俺は心のどこかで2人で一緒に寝ている状態に希望と言うか、最後の繋がりを感じていたのだ。これが無くなってしまった瞬間、2人の関係は崩壊すると……。  だからこそ、俺はは隣に彼女が居ないと言う現実を受け止められないでいた。 (有り得ない。何かの間違いじゃないのか……。最悪だ……この世の終わりだ……。夢だ、そうだ夢に違いない。これは悪い夢なんだ。覚めろ、覚めろっ覚めろ!!) 頭の中で念じる事数十回、遂に覚める事はなかった。先程も述べたがこれは紛れもない『現実』であるからだ。 「落ち着け、俺……」 自分に言い聞かせるがそれとは裏腹に息遣いはどんどん荒くなる一方である。それでも俺は落ち着けと呟きながら、居間との境界線である障子を開けた。  その瞬間、俺の視界は真っ白になった。居間の電気が点けっぱなしになっており、光が俺の目に飛び込んだからだ。落ち着いていれば障子の端から漏れる光にも気がついたのだろうが、生憎焦りまくっていた頭は視界すらも狭めていたらしく見えていなかった。  暫くして、漸くなれた俺の目に飛び込んできたのはまるでつまならない授業を受けているの学生の様に机に突っ伏して眠る彼女の姿だった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加