5人が本棚に入れています
本棚に追加
「企画書の作成は終了しました。次は意見書の作成なんすけど、意見の纏めと整理がまだ終わってないんでそっからお願いします。」
「了解。あ、天原さんの机の上にある書類コピーしといて。10部ね、終わったら帰っていいから。」
「わかりましたー。」
まだ朝早いと言うのに、我社の新設部署『消費者提携課』通称、消提課(ショウテイカ)のオフィスはなかなかにばたついていた。夜勤組と早番組の仕事の引き継ぎが行われているからだ。寝る時間を削って働かなければ、この消提課の仕事は片付かない。とは言うものの、消提課に所属する者全員が寝る時間を削っていては全員がダウンしてしまう恐れがある。だから、そうなってしまわない様に当番制にして早番、日勤、夕勤、夜勤をローテーションで回しているのだ。
「おはよーございまーす。あれ、天原さんって今日早番でしたっけ?」
此処で働く若い男の後輩の一人がオフィスに入って来た俺を見て首を傾げながら挨拶する。
「おはよう。いや、今日は普通に日勤だ。」
「じゃあどうしてこんなに早く?」
「仕事が溜まってきてるからって理由じゃ納得出来ないか?」
俺は苦笑しながら言う。
「いや、納得っす。コピー終わりっと。じゃあ、俺は上がるっす。」
「あぁ、お疲れさん。(追求したがりじゃなくてよかった)」
内心ホッとしながら後輩を見送った。消提課内でも俺と彼女が付き合っていると言うのは周知の事実であり、人によっては俺が朝早くに現れれば彼女の事を気にする者もいるだろう。実際、仕事は溜まってはいたが無理やり終わらす程かと訊かれれば微妙と答える程度でなのだ。そう、それは言い訳に過ぎず、俺は家に帰れないから仕事をするには早いがオフィスに来る他なかったのである。
「よっし、やるかぁ。」
俺は伸びをすると自分の机に座り、書類作成を始めた。
最初のコメントを投稿しよう!