見知らぬ靴

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見知らぬ靴

 二、三日前から玄関に見慣れない靴がある。  最初に見た時は、誰かお客さんでも来ているのかと思ったけれど、特に来客はなかった。  次に見たら、作りつけの下駄箱の下に移動していたから、家族の誰かのものなんだと思った。  うちの家は、両親と男三兄弟の、ぼぼ男ばかりの家庭。靴は男物だから、父親か兄弟のどちらかの物だろう。  特に置き場に困ってもいなかったので、誰かが新しい靴を買ったのだろう、程度の認識ですぐに気にしなくなった。  それと同じ頃から、家の中で奇妙なことが起こるようになった。  誰もいない部屋から人の気配がしたり、夜中に誰かが歩き回る音がしたり…。  最初は家の人間の誰かだと思っていたけれど、たまたま全員が揃った夕食時、 話し合ったら、そんなことをしている奴はいなかった。ついでに、あの靴も、誰も買いももらいもしていなかった。 「じゃあ、あの靴、何?」 「っていうか、あの靴見つけてからだよな。家で変なことが起きるようになったのって」  話題が一旦靴に映り、すぐに両方の話が繋がったものになる。  家族全員、霊感なんてないから、幽霊話みたないものは信じたことがなかったけれど、さすがに、気味が悪いから、あの靴を捨てようということになった。  善は急げで、早速、明日にも捨てようと決まったが、母親は怖がりなので、最初から、そんな靴は見るのも触るのも嫌と拒否。父親と兄貴は、それぞれ仕事とバイトが忙しいので無理と一蹴。結局、俺と弟が靴を捨てに行くことになった。  母親に聞いたら、地域で違うらしいけれど、うちの近所は、靴は可燃ごみでいいらしい。  本当は、決められた日の決められた時間に出さなきゃならないのは判っているけど、一刻も早く家からなくなってほしかったので、夜更けにこっそりと捨てに行くことになった。  弟と二人でゴミ捨て場に向かう。ウチの集積所は民家の壁沿いとかではなく、公民館前の空き地なのが都合がいい。  人目がないのを確認し、ゴミの名残で汚れた場所へ靴をこっそり置いてくる。  これでよし。確か明後日が収集日だと聞いたから、それであの靴はなくなる筈だ。  そう思い、弟とにこにこと帰路についたが、夜中にまた妙な物音が響き、確認したところ、玄関先には捨てた筈の靴があった。  …戻って来たのか?
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