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『あたしたち終わりにしよ
サヨナラ』
裕太郎にメールを送って
喫茶店を出ると
じゃんじゃん降りの雨。
にも関わらず、あたしは
傘も差さず難波の街を
しばらく歩きつづけ
シャッターの閉まった
古い店の前に座り込む。
行き交う人々が
あたしを一瞥しては
嘲笑っているように思えて
思わず膝を抱え込んで
声を殺して泣いていると
「こんなとこおったら
風邪ひいてまうで?」
優しくて低い声が
頭上から降ってきた。
ちらっと見上げると
細身で金髪の男が
あたしを見ていた。
「行く所も帰る所もないんです
ほっといてください」
可愛げもなく答えてから
再び膝を抱え込む。
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