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険しい表情で優しく言い放つ父に怯えるように、役人は米を広い集めた。
農民の苦労を決して無下にしない父を心から尊敬する瞬間は幾つもある。
「直、民を苦しめてまで手から溢れ落ちるほどの贅が欲しいか?」
城での生活も質素倹約が当たり前で"米粒一つ残さず"を心掛けて生活をしている。
こんな城主に僕なんかがなれるのかな……
ふと空を仰ぎ自由に舞う二羽の鷹に正太郎と自分を重ね、自由を夢見ると、胸が締め付けられる。少しだけ会いたい。
顔を見て己の役目が何かを心に戒めないと……。
馬を走らせ田畑を見て回るが姿がない。
川端に横になる人影を見つけ馬を下りて走り寄る。
「ショウ、何を見ているんだ?」
同じ方向に視線を流しても写るのはただ高く広く透き通る青。
正太郎の横顔を盗み見る。なんて綺麗な横顔なんだ、この青に負けない清爽さ。
いつまでも見つめていたい。
僕の視線が顔から這うように首筋に下がればその肩に顔を埋め抱き締められ正太郎の匂いに包まれたい、と爽やかさとはかけ離れた想いが身体を覆う。
此方を向いてほしいな。
空から視線を自分に移し、視線が交ざる
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