二半

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「直、農作業が済んだら魚を捕りにいくんだけど、見に来るか?」  顔一杯に喜びを表した直の頭に手を乗せると、伸ばした手が俺の頭を越えた。  もう、俺より少し背が高くなった……  米以外にも芋などの野菜を育てているので農作業は忙しかったが、直との約束が楽しみで急ぎ仕事をこなす。お天道様が南から少し傾いたころ昼食の麦飯を食べて川に向かった。 「ショウ、やっと勉学が終わった~、魚はどう?」  川魚を捕るのは専ら素手で岩影に隠れる鮎を上から潰すように捕まえた。網などの仕掛けは子供には難しく手間が掛かる。でも沢山捕って喜ばせたかった。  投網くらいなら持ってくれば良かったな……。  直もやってみると、すんなり獲れてしまう。暴れる魚を力強く握れば、跳ねた水飛沫が、顔を濡らし片目を瞑る満面の笑みと共に輝く。  直の輝きに引寄せられるように右足が前に出る。ふいに不安定な岩に足を乗せてしまい、ぐらり と視界が回る。 「危ない!」  直の声に思わず両目を固く閉ざし、腕が何かを求め空をさ迷うと力強く腕を引かれた。  どんっ  幼い頃自分の胸に閉じ込めた身体に今は閉じ込められ厚い胸板から心の音を聴いている。濡れた肌に頬を寄せ直の熱を感じる。  鼓動が重なり、髪にかかる息が暖かい…… 直の右手が俺の後頭部を包み髪を乱した。いつまでも心地よい手を感じていたい。背中に俺の手を回せたら……  もう子供ではない直の身体に俺の胸が煩く動き出す
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