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「わ、悪い。助かった。」
「怪我はない?」
俺を気遣う視線から避けるように顔を反らし身体に距離をとる。そのまま俯くしかなかった。
だって、今は絶対に顔が赤い……
「大丈夫。ほんと…… だから。」
「いつかの逆だな。」
その顔は俺の身体の奥を震えさせる
ははっと笑う太陽のような笑顔は俺の不実な気持ちとは似つかわしくない。この笑顔に相応しい心持ちでいなくては……
そう、友達だから……
明るく
「本当だ。直はすごく逞しいな。あの頃は俺の方が大きかったのに。」
手を自分より高い位置にある直の頭にのせ、塗羽色の髪をわざと撫で、指に絡む細い線を慈しむ。
つい触れたいという誘惑に負けてしまう。
食べる物が違うからだろう、直は俺よりもどんどん大きくなる。身体はどんなに成長しても俺に対する優しさは変わることがない。
だから、楽しくて、嬉しくて、胸が高鳴って……
この胸の痛みの名前を俺はきっと既に解っている
「そうかな、でも強くなりたいから嬉しいな。」
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