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霧のまだ濃く朝日も昇らぬ刻、静かに布団を抜け出し、音もなく襖を開ける。
抜き足差し足!
逸る気持ちを押さえ、そろそろと長く冷たい廊下を歩く。
朝の前の静かな空気を浴びながら息を切らし村道を走れば、向かう先にある笑顔を思い浮かべ、顔が緩み足る速度も上がる。
「正太郎起きよ!」
城下町から少し離れた田畑の中の小さな家に着くころには空が赤みがかる。
農村の朝は早くもう朝支度を済ませ畑へ向かおうとする夫婦の側で大きな欠伸をしている少年へ駆け寄ると、横から少年の母親がすまなそうに向き直る
「まぁまぁ若様こんな汚いところへ……」
「おはようございます、ショウと遊びたいのです。収穫のお手伝いをいたしますので許していただけませんか?」
丁寧に挨拶をしてお願いをするが、手伝いなどしなくても少年の母が僕の言葉を断れるはずもないのをちゃんと知っている。
早く! 早く!
もう毎度の事と両親とも優しい笑顔で送り出してくれる。
「いつも、正太郎と仲良くして頂いてありがとうございます。どうぞ連れていって下さいな。」
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