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 元服し誰も自分を幼名で呼ばなくなった。  ただ朝日の前に村に会いに行く時だけが純粋に楽しいと思える時間となった。もう父の後ろを眺めるだけではないのだと背筋を伸ばし城の櫓から正太郎の田畑の方向を向く。良い国であり続けなければ。  朝日の美しさを共に見たくなり二人で木に登った。眩しさに隣にいる正太郎を観れば目が赤い。正太郎は何を考えている? 生活が変わろうと立場が変わろうと名前が変わろうと、正太郎の前で俺自身は何一つ変わっていない。  いつか……愛する者も現れるのだろう?  時がたてば当たり前にある家族の変化にも胸が痛い。もしも予告もなしに正太郎にそういった者が現れたら俺は正気ではいられないだろう……  先を考えれば、いつまで続くのか分からぬこの関係が一日でも長く続くことを祈る。朝日と正太郎の美しさに堪えきれず余計な事が口から漏れた。 「ショウは……結婚は……しないのか?」  耳に届く自分の声はあまりに冷めたものだった。先などみたくないし考えたくもない。 ーーその後、山永様に呼ばれた。  特産の山の幸を用意し幾つもの山を越える。小さな国を治めるためには大国の援助はどうしても欠かせない。先に嫁いだ姉様にも少しは会えるのではと期待し山永様の城を目指した。
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