三半

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 幾日か後に、山を幾つも越えた先の都へ直は行った。山永様に呼ばれてのことのようだが農民の俺に詳しい理由は分かるはずもなく、ただ戻ってきた翌朝の機嫌の悪さに会話を詰まらせた。  太い枝を刀に見立て、振り回し届く木々を傷つける。剣の心得など分からないが、直の暴れる剣術に剣の作法などなかった。痛々しいほど乱れた直の心を慰めることが出来ないことが、更に俺の心を傷つける。 「泣くな、正太郎が悪いんじゃないから。俺がこんな時でもお前に甘えてしまって悪かった。」  俺の頬の涙を拭い顔を寄せられ直の優しい瞳がすぐ顔の前にある。知らずに溢れる涙が直の心を落ち着けていたようだった。  違う、直に脅えてはいない、何を抱えているのか…… 理解もできない立場が辛いんだ。  其を口にしても良いのかすら分からない。 「もうすぐ、兵を連れて出陣する。その要請に山永様が俺を呼んだんだ。」  は?  木々のざわめきが聞こえなくなる  直は?  揺らめく視界の中で直の視線だけは鋭い  戦地へ行くのか?  側にいられなくなるなんて…… 考えられない  まさかこの平和な国にまで戦の影が近づくとは……  震える唇を噛みしめた 「光頼様のご武運を…………お祈り……致します。」  これ以外何を言ったらいいのか分からない馬鹿な頭だ
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