三半

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 小さな城で厳かに出陣式が行われ、冷たい空の元、静かな村を武者行列が通る。甲冑を身に纏う直を遠くから見送ると、視線が合ったように感じた。  なんて遠い方なのか……  無事の帰国をお祈り致します。  その日から早朝毎日、氏神様のもとへご武運を祈りに向かう。  "神明様、どうか、どうか、直を御守り下さい。"  冷水を被り身体を浄め、震えを止めるよう唇を噛む  "神明様、どうか、戦の刃が直に届かぬよう、御守り下さい。"  どうか帰ってきますように……  自分よりも若い彼が幾つもの危険に晒されると思うと気が気ではなく、仕事も手を付かない日々が続いた。  なぜ自分は農民なのだろうか……  なぜ直は城主なのだろうか……  もしも自分が女なら身分こそ違えどこの想いに胸を張れたのだろうか。いや、女であろうと農民の村娘を相手にするはずがない。  側で共に歩みたい、せめて武士であったなら直を守る楯にならなれるのか?
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