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山永様と話ながら姉様のことを聞いた。この城で側室として一人の姫を産み生活している。少しだけあの月の晩を思い出し会いたくなった。
「姉上の元気な姿と姪にお会いしたいのですが、お目通りの機会を頂けませんか。」
山永様に断る理もなく翌日に姉様の住まう別邸へ足を運ぶことができた。
久方ぶりに見る姉様のお顔に涙が滲む。
「お元気にございますか。可愛らしい姫と姉様に会えて嬉しく思います。」
「よく会いに来てくれましたね。心より嬉しく思います。」
姉様は少しお痩せになられていた、いつも笑顔で生き生きしていらしたが、肩身の狭い思いをしておられるのかもしれない。少しの会話の後に問いてみる
「姉様は、幸せでしょうか? 近々、正室を私も迎えますが、女性の気持ちなど分かりません……」
なかなか口を開かず四角い空を見上げていた姉様が、ゆっくりと静かに話だす
「山永様のお子であっても、私は、姫が可愛いく愛しいのです。
私の宝でございます……
私が誰にも想われずとも、我が子には想いを送り其処に幸せを見出だすように、此所は地獄ではないのですよ。何処にいても誰しも幸せを感じる事はできるでしょう。
光頼様の想うお幸せを大切にしてください……」
姉様の笑みの中の強さは月日を重ても翳ることがない
俺も姉様も婚姻自体に幸せを望む身分ではないのだから、これ以上姉様の心の中まで忖度しても仕方がない。
俺の幸せは正太郎の世が太平であることだけ。
一礼しまた会うことを約束した
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