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「最悪だ…この世の終わりだ…」
僕は頭を抱えてうなだれていた。
隣りを見れば、木製ベッドの上で姉さんが気持ち良さげに寝息を立てている。
僕らは山奥の小さな家で暮らしていた。父さんと母さんはずいぶん前に家を出ていったきり戻らない。
姉さんは僕の唯一の家族だ。
だけど姉さんはもう三日も目を覚まさない。
三日前、玄関先に落ちていたトラックのミニカーを見た途端、姉さんは顔を青くして、
「思い出した…」
と呟いた。
「何を?」
「ヨウタは何も思い出さないの?」
僕が小さく首を振ると、姉さんは少し寂しそうな顔をした。
その夜いつものように眠りにつくと、それっきり目を覚まさなかった。
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