第二章

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 凜子の最近のマイブームは料理らしい。それも結構型にこだわるタイプの本格料理で、凜子のやつ、あの日以来千明から貰った料理本を読んでレシピを丸暗記しては、旬の野菜やら、安いお肉やらを台所で切っていろいろ調理している。この様子を見るとどうやら「弁当を作る練習」というのはただの口実に過ぎなかったらしい。   以前までアニメに出てくる魔法の杖を買えだの、光るパジャマを買えだの言っていた 凜子から、まさか「ハンバーグを作るからひき肉とパン粉を買って。あとエプロンも」と頼まれたときは正直耳を疑った。だけどそういえば千明から自作カレーの味見役を任されたのも僕が凜子と同じくらいの年頃だったから、女の子がこの年で料理に関心を示すのも案外普通のことなのかもしれない。そうでなかったとしたらテレビの料理番組の影響を受けたのか、あるいは千明本人から直接入れ知恵されたかのどちらかだろう。  とはいえ、僕には凜子の意思を尊重し、できる範囲で彼女と行動を共にする義務があるから、凜子が食材が欲しいというなら選択肢は一つしかない。とゆーわけで、その日僕は彼女を連れて、食材集めのためにスーパーへ行った。凜子がカゴを持ちたがったのでそうさせてやり、僕は必要な食材が書かれたメモをその隣で読み上げた。彼女は僕の指示通りに棚から食材を取ってはつぎつぎとカゴの中に入れていく。 「パルメザンチーズ、たまねぎ、卵……凜子、あと牛乳とってきて」 「りょうかい」  牛乳を入れたところで重くなったのか、凜子は僕にカゴを押し付け、食材を取る係に回った。僕が「ベーコン」と言うと、彼女はさっと風のように素早く視界からいなくなり、数秒でその売り場を発見すると大声で僕にその場所を知らせるのだった。 「次、黒コショウね」 「りょうかい」
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