序章

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 どうやら「戦う魔法少女」っていうのはどの世代においても、そしてどんな女の子においても憧れの的になるものらしかった。魔法使いと日記に果たしてどんな関連性があるかは定かでないが、まあ、彼女が好きでやっているなら僕は別に何だって構わない。  日記、ねえ。  凛子が僕の住むアパートへやってきて早四ヶ月。僕もだいぶ彼女との生活や、不可思議な謎を追いかける日々にも慣れてきたことだから、この数ヶ月の間で溜まった解決済みの事件や、彼女の精神的な成長をどこかに記録し始めるにも確かにちょうどいいタイミングであるかもしれない。幸いなことに、最近のテレビは花開きの予定日時を訴えるだけで物騒なニュースを一つも報じないし、凛子もアニメに夢中だ。犯罪者も探偵も春休みで働く気がないのなら、助手も一息ついて事件簿の製作でも始めるのが妥当なところだろう。ま、思い出は大切にしたいしね。  そうだな、……とりあえず一番印象深かったあの事件から書き始めることにしよう。僕は新品のリンゴの日記帳を開き、冬に起こった例の殺人事件を思い返しつつシャープペンシルを握るのだった。
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