ハヤト

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佐倉明日香は一見完璧だ。 ふわりとなびく柔らかい髪は、カラスの濡れ羽色で神秘的な雰囲気を醸し出す。憂いを宿すその瞳は、黒曜石のように輝き、周りを長い睫毛が縁取る。 陶器のような白い肌、スッと通った鼻筋、華奢な身体に長い手足。 人の好みは数あれど、ほとんどの人は彼女を可愛い、あるいは美人だと思うだろう。 勿論、完璧と言うからには、容姿だけではない。 勉学においても、ピカイチ。学年不動の一位だし、模試でもトップクラス。 運動神経も、かなりいい。足も速ければ球技も水泳もできて、習い事のバレエでも優秀だとか。 性格だって悪くないし、誰にでも分け隔てない態度をとるから男女ともに人気がある。 彼女は、才色兼備、衆目美麗、容姿端麗、そんな言葉をかき集めて形にしたような人である。 だけど、俺は知っている。 彼女には欠点があった。
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