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最悪だ……この世の終わりだ……
僕は手からパラパラとこぼれ落ちていく銀色の欠片を見てただただ絶望した。
こいつは壊れてしまったんだ。
それをどうにかしようとは思っても、それを直せるとは到底思えなかった。
助けを求めようにも家族はいない。
為す術なし。
僕は孤独の中でうちひしがれた。
なぜ、こうなってしまったのか。
今朝はいつもよりたった一〇分目覚めるのが遅かっただけなのに……。
ちょっと慌てて、思わずぐいっと力を入れて上に引っ張っただけなのに、それは壊れてしまった。
あまりにももろく、あっけなく、はかなく。
そうだ、運命は、僕に酷い仕打ちをしたのだ。
しかし時間は刻まれていく。
ああ学校、行かなくちゃ……。
僕は壊れた学生服のズボンのチャックを呆然と眺めるのを止め、意を決し針と糸を取り出した。
もう、ズボンのチャックのところ(過去形)を縫い付けていくしかない!
それでズボンのチャック(というものがあったところ)は開くことはなくなるけど……。
こんなので学校を休む理由になったら親が帰ってきたら叱られるどころじゃすまない。
後戻りはできないことをやって、股間を鞄で隠しながら慌てて教室に駆け込む。
「お前、なんだそれ?」
秘密はあっけなく見つけ出された。
クラス内は大爆笑。
好きなあの子がこう言った。
体操着に着替えてくればよかったんだんじゃない・・・の?――と。
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