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「すみません、12時半に2名で予約したキソダニですが。はい、キャンセルでお願いします」
事務的な口調で淡々と彼は向こう側に告げた。
察するに、わたしと一緒に行くはずだったレストランの予約を取り消したのだろう。
そしておそらくこの場で別れて、きっともう2度と会うこともない。
終わった。
「これでオッケー。よし、行こう」
彼は通話を打ち切ると、スマホをもとの場所に戻し、干上がったヒマワリのようにうなだれるわたしの肩をポンと叩いた。
「……え?ど、どこにです?」
バサリと顔を上げる。
「この近くにオレが通ってる名医がいるんですよ。たぶん、ちゃっちゃとすぐにくっつけてくれます。美味しいもの食べるなら、それからでもじゅうぶん間に合う」
彼は歯を見せる。
わたしの胸の中を、ホットレモネードが通過したような、甘酸っぱさが渦巻く。
「だ、だけど、予約取り消したんじゃ」
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