6 言いたくない

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授業が終わり、HRが終わると決まってみのりの頭にぽんと章の手が乗る。 「帰れる?」 聞く章の表情は、彼が気持ちを自覚してから一層甘く崩れた。 「うん、」 見上げて微笑むみのりが頬を染め、章はきゅっと苦しくなった胸に、ぐっと手を握りしめた。 帰って行くみのりと章に、悠馬と真希は視線で追うように振り返った。 「アイツ等付き合ってないんだって」 「うん、聞いた」 「あんなにわかりやすいのにな?」 「うん、わかりやすい」 「真希ちゃん、わかりずらいよな?」 「うん……って、え?私?」 「好きなヤツ、いないの?」 「え?え?私?」 「俺、真希ちゃん好きなんだけど」 「っ、」 「俺と付き合って?」 「…………」 みのり達を目で追ったままされた告白に、真希はギギギと音がしそうな様子で首を動かした。 悠馬もまた照れくさそうな顔を引き締めてゆっくり顔を真希へと向ける。 「え、」 「うわっ、見ないで!」 「っ、真希ちゃん、」 真っ赤になった真希に悠馬は目を見開いた。 「ちょ、ちょっと待って!」 いきなりの事に、真希はくるりと体を反転させ悠馬に背中を向ける。 今そんな雰囲気じゃなかったのに!! 真っ赤になった顔を両手で覆う真希に悠馬は後ろから抱きしめた。 「まーきちゃんっ」 「ちょ、ちょっと!悠馬、」 「ね、ね、返事聞かせてー?」 コクリと頷いた真希に悠馬は腕の力を強めて、「ぎゅー」と言いながら抱きしめなおす。 そして。 「アイツ等、俺らより甘いのに、何故こうならないんだろ?」 悠馬は真希を抱きしめながら首をかしげた。
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