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「セーイ、今日カラオケいこーぜー」
「お前らホント、カラオケ好きな?」
「だって楽しいじゃん!どうせ今日暇だろー?」
「行こうぜ、セイちゃん」
西高ではHRが終わると高橋と斉藤が誠に声をかけた。
誠の両端から肩を組むようにした2人は覗きこんでニッと笑う。
みのりと居る時は自分の方が大きいのだが、こうされると少々小さめな自分の身長を恨めしく思う。
「……今日はバイトもないし、別に行ってもいいけど」
「お!やったね。俺らいつも行くとこあるから、ソコ行こうぜー」
西駅は西高側が裏となっていて、3人は駅を通り抜け、表の駅ビルやデパートが並ぶ方へと出た。
駅正面から少し反れたビルに目的のカラオケ店が入っていて、誠は初めて入るそのビルを一度見上げた。
「いらっしゃいませー」
受付の店員が声をかける。
高橋と斉藤が先に歩き、慣れた様子で受付を済ませた。
「そう言えばセイちゃん連れてカラオケとか初めてじゃね?」
「あー、だなー。セイ誘おうとすると決まって“デート”って断るし」
「あー……」
誠は頷きながらみのりの顔を思い浮かべた。
ここんところ、毎日、休み時間ごとに連絡しすぎて誠に対するみのりの態度が冷たい。
やりすぎなのはわかっているが、“谷口と言うヤツ”と仲良くやってるのかと思うと気が気じゃなく、つい連絡してしまうのだ。
今日だって本当はみのりとデートしたかったのだが、断られてしまった。
どうやらみのりは1人で帰っていないらしい。
しかもその相手というのが“谷口というヤツ”の様で、みのりに問い詰めれば、とうとう、「私が好きなだけだから」と言われてしまった。
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