6 言いたくない

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誠の髪が窓から入った太陽に反射して金色に光る。 1人で膨れて涙目の誠に、章は内心、可愛いと思ってしまった。 「でも俺、みのりには幸せになってもらいたいから……っ、」 唇をかみしめた誠に章はますます首をかしげ、少し腰を折り屈むと誠を覗き込むようにした。 そんな章をちらりと見上げ、誠は頬を膨らませるとぼそりと呟くようにする。 「だって……俺じゃ、ダメなんだ」 「……おい?」 「俺の名前……藤田誠」 「……藤田?」 首をかしげた章に、誠は心底言いたくないという顔をしながら、また呟く。 「みのりは俺の……」 「……?」 章は目を伏せる誠の言葉に身構え、盆を持つ手に力を入れた。 「俺の……双子の妹、なんだよ」 「…………は?」 優に5秒は数えて声を出した章。 その顔は意味がわからないという様な表情だった。 「だーかーらー!みのりは俺の双子の妹なんだって」 「……双子?」 「似てないとか思ってんだろっ!そりゃそうだよ、だって俺達二卵性だし!」 ぶっすーと下唇をだして思い切りふくれっ面の誠を見つめていた章は、 「くっ……ぷっ、くくくっ、」 徐々に笑いだすと、少し困ったような、しかし安心した顔で破顔した。 「笑うな!」 「いや、悪い。俺がすげぇ安心しただけ」 「むぅ」 「これで心おきなくみのりと付き合える」 ふっと微笑んだ顔はみのりにいつも見せるものと同じ顔で、誠は僅かに頬を染めた。 さらりと揺れる誠の髪が茶色く輝き、章は目を細めると思わず手を伸ばした。 「くくっ……可愛い」 「っ!!?」 「みのりと同じだ」
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