7 早く言いたい

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章は誠が座っていた場所へ腰掛けると、みのりに視線を向けた。 「昨日、聞いた」 「なにを?」 「みのりと誠が双子だって」 「あ、……うん」 「まさか双子のお兄ちゃんいたとは思わなかった」 「あー……あはは、そうだよね。マー君、高校別になった途端、双子だということは秘密だぞって言うから……」 「双子は秘密?」 「マー君ね、凄くシスコンなの。マー君がバイト無い日はデートだって言って決まって手ぇつなぐし……」 「そっか」 みのりを覗き込むようにしていた章は視線を前に向けると体を背もたれに預けた。 「ずっと聞きたかったんだ」 「……なにを?」 「前に誠と待ち合わせしてたでしょ?彼氏かと思って」 「……マー君が、彼氏?」 「ん」 「やだ。それは嫌」 困ったように天を仰いだみのりに、章はくすくすと肩を揺らした。 「みのりと誠の温度差激しい」 「私が普通です」 「みのりはブラコンじゃない?」 「谷口くん、それは本当に勘弁して?」 「ははっ、じゃあ、これで心おきなくみのりに言える」 「うん?なにを?」 「それは……」 「ん?」 「ここじゃ、言いたくないかな。降りたらちゃんと聞いてもらう」 みのりを振り返り微笑んで目を細めた章に、みのりは少なからず期待して胸をときめかせた。 『南駅ー、南駅ー、降り口は……』 アナウンスの声にみのりが驚いて肩を揺らし、慌てて立ち上ろうとしたのを章が止めた。 「ちゃんと止まってからじゃないと危ない」 ね?っと首をかしげ、電車が止まるとみのりの手をとった。 「ちょっとだけ、こっち、」 手を引いて先を歩く章の後ろ姿を、みのりはドキドキする胸を押さえて見つめた。
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