7 早く言いたい

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章は朝のこの時間でも人気の殆どない場所へとみのりを連れてきた。 立ち止って掴んだ手をそっと離し、みのりへ向かいあうとピンクに染まった頬を一度撫でた。 「初めてなんだ」 「……?」 章は苦しそうに眉を寄せて、俯きがちに目を伏せる。 それからふぅと息を吐くと、視線を上げてみのりを見つめた。 「誰かをこんなに好きだと思った事、ない」 見つめる章の瞳がうるんだように熱っぽく、僅かに細まる。 「みのりが好きだ」 その瞬間、みのりの胸はぎゅっと絞られたように苦しくなり、無意識に息を止めていた。 「こうして……ずっと触れていたい」 さっき頬を滑った手がもう一度同じようにあてがわれ、その手はゆっくり滑り落ちるとみのりの手をとった。 「……みのりが嫌だって言っても、離せない」 きゅっと力の入った章の手に応えるように、みのりも握り返し、そして漸く息を吸い、口を開いた。 「私も、谷口くんの事、好き」 「……ホントに?」 「ホントに、」 「みのりも俺を好きならいいなって考えてた」 「ふふっ、」 「ヤバい、うれしい」 繋がった手を引き、傾くみのりの体を包み込んだ。 「誠に怒られる?」 「んー……どうかな」 「……怒られても知らないけど」 「ふふっ、マー君結局私に甘いから、大丈夫」 「…………」 「ん?谷口くん?」 「……俺も、みのりに甘くする」 「あははっ、もう十分あまいけどね」 「俺、甘い?」 「うん、とっても」 「でも、足りない」 章はぎゅっと抱きしめる腕に力を入れて、みのりの頭に頬ずりした。 「谷口くん」 「なに?」 「学校、遅刻しちゃう」
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