7 早く言いたい

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「あ、忘れてた……じゃあ、はい、」 章の大きな手が差し出され、みのりは一瞬躊躇ってその手に自分の手を重ねる。 「ちっちゃくて可愛い」 そう言ってみのりの手を引きながら歩きだした章に、みのりは自分のすっぽり包まれた手を見てくすくすと笑った。 マー君と全然違う。 自分の手を完全に包むようにしている手は、力加減がされている。 誠のようなぎゅっとつないで離さないという感じではなく、しかし章の手もまた離されないのがわかって嬉しい。 教室に入るまで、この手が離れたのは玄関に入って靴を履き替える時だけだった。 「おはよう、」 そう言いながら教室に入ったみのりの隣に、クラスメートたちが顔をこわばらせた。 「あー……っと、おっはー、章とみのりん」 悠馬が顔をこわばらせたまま頑張って笑顔を作った。 「おはよう、悠馬くん」 応えるみのりは全然気が付いていない。 章はジロリと悠馬に視線を向けた。 「……悠馬」 「ん?ん?なにかな?」 「慣れ慣れしく話しかけるな」 みのりの後ろから章の腕がまわる。 章の眉間にわかりやすく眉が寄った。 ピシッと固まった悠馬にみのりは首をかしげ、頬を染めて章の腕から抜け出そうと振り返った。 「谷口くん、みんな居るから恥ずかしいよ」 「……みのり、章って呼んで」 「えっ!?い、今?」 「いま」 「な、な、なんで?」 「なんでって……牽制?」 「牽制って誰に?」 「そんなの、」 訳がわからないとおろおろするみのりの頭をポンと撫で、そしてぐるりと教室を一瞥する。そして、 「クラスのみんな」 にっこり微笑んでみのりを見た章に「絶対大丈夫です!」クラス中が掌を見せるように持ち上げた。
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