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「あ、忘れてた……じゃあ、はい、」
章の大きな手が差し出され、みのりは一瞬躊躇ってその手に自分の手を重ねる。
「ちっちゃくて可愛い」
そう言ってみのりの手を引きながら歩きだした章に、みのりは自分のすっぽり包まれた手を見てくすくすと笑った。
マー君と全然違う。
自分の手を完全に包むようにしている手は、力加減がされている。
誠のようなぎゅっとつないで離さないという感じではなく、しかし章の手もまた離されないのがわかって嬉しい。
教室に入るまで、この手が離れたのは玄関に入って靴を履き替える時だけだった。
「おはよう、」
そう言いながら教室に入ったみのりの隣に、クラスメートたちが顔をこわばらせた。
「あー……っと、おっはー、章とみのりん」
悠馬が顔をこわばらせたまま頑張って笑顔を作った。
「おはよう、悠馬くん」
応えるみのりは全然気が付いていない。
章はジロリと悠馬に視線を向けた。
「……悠馬」
「ん?ん?なにかな?」
「慣れ慣れしく話しかけるな」
みのりの後ろから章の腕がまわる。
章の眉間にわかりやすく眉が寄った。
ピシッと固まった悠馬にみのりは首をかしげ、頬を染めて章の腕から抜け出そうと振り返った。
「谷口くん、みんな居るから恥ずかしいよ」
「……みのり、章って呼んで」
「えっ!?い、今?」
「いま」
「な、な、なんで?」
「なんでって……牽制?」
「牽制って誰に?」
「そんなの、」
訳がわからないとおろおろするみのりの頭をポンと撫で、そしてぐるりと教室を一瞥する。そして、
「クラスのみんな」
にっこり微笑んでみのりを見た章に「絶対大丈夫です!」クラス中が掌を見せるように持ち上げた。
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