7 早く言いたい

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* 昼休み、みのりはほとほと困り果てていた。 「えっと……章、くん?」 「だめ」 「っ、」 「みのりがちゃんと呼べるまで離さない」 章はみのりの顔を両手で挟み、じっと見つめていた。 それは真希がみのりの席の前へと移動してきて一緒にお弁当を広げようとした時だった。 「みのり、」 後ろから章が声をかけ、みのりを振り返らせた途端から始まったこの状態。 「章……くん、お腹すいたよ」 「なら早く呼べばいいのに」 「うぅ……男の子呼び捨てするなんてしたことないし……」 視線を揺らし目を伏せるみのりに、章は嬉しそうにほんのり頬を染めて口元を緩めた。 「うわ、章さんのにやけ顔初めて見たし……」 「……でもやっぱりイケメンだよね」 「……真希ちゃん、俺という存在がいながら……」 「あはは、ごめんごめん。でもしょうがないよ。谷口は女子たちの目の保養だから」 「……なんかすげーくやしいけど、否めねぇ」 章がみのりの顔を挟み見つめ合うすぐ横で、真希と悠馬が頷き合う。 みのりは2人の会話の隣、困ったようにため息を漏らした。 「みのりの初めて、俺にちょうだい?」 「……え、章さん?」 「男を呼び捨てる、初めて。ほら、言わないと昼休み終わっちゃうよ?」 「あー、そういう初めてね。いや、今ちょっと焦ったし」 ほぉーっと胸をなでおろす悠馬の頭を真希が小突いていると、章の鋭い視線が飛んだ。 「……悠馬、さっきから煩い。あっちいけ」 「ひでぇ!俺だって愛しの真希ちゃんとご飯食べたいんですぅ!」 「もうっ、悠馬ったら、」 え?今、何て言ったの? みのりが悠馬を振り返ろうとしたのだが、章が挟んでいる手でそれは敵わなかった。
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