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みのりは意を決したように一度口を開け、すっと息を吸った。
「――っ、」
「っ、」
言おうとした瞬間、章もまた僅かに目を見張ったため、結局声に出せなかった。
「……みのりにじらされるのも結構いいかも」
そう言って目を伏せる章。
みのりは困ったように章を見つめた。
悠馬と真希は、章の言葉に絶句中で、
「……普段クールなヤツがあんな事いうとドキドキすんな?」
漸く息を吸った悠馬がぼそりと真希に呟いた。
みのりは目を伏せて今度こそと息を吸った。
「あ……章、もうご飯、食べよう?」
小さな声だったが章の耳に確実に届いた。
バッと顔を上げた章がみるみる赤くなっていく。
漸くみのりの頬から手を離すとそのまま自分の口元を覆った。
「ヤバい、みのり可愛いっ」
「もう、いいから!ほら、ご飯食べて」
「みのり食べたい」
「っ、だめです。っていうか私、食べ物じゃないです」
「ううん。いつか、俺が美味しく食べるよ」
「こら、章!心の声が洩れ過ぎだぞ!」
「…………」
「俺を無視するな!」
「……悠馬いたのか」
「俺は最初からいるわ!!」
「……うるさい。わめかなくても聞こえてる」
「~~~~っ!!」
なんなんだ、このみのりんと俺の違いは!
悠馬は両手を握りしめて声にならない声を発した。
「……悠馬、」
「うぅ、真希ちゃーんっ!」
「ああいうものだと思って、諦めな?」
「いや、わかってるよ。分かってるさ、俺だって!もともと章は俺に対して、いや、誰に対してもあんな感じだし!」
でも、もしかしたら章の氷の様な態度が溶けてくれるかもしれないって思ったんだ。
悠馬は、「みのりん、すげぇな」パンをかじりながら呟いた。
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