8 ライバル出現!?

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玄関を出て、みのりは繋がる手をちらりと見下ろした。 自分の手はすっぽり章の手によって包まれてしまっている。 時々、きゅっと強められる力に頬が染まった。 「みのり」 章の声はいつも呟くように発せられる。 ついさっき、図書室で聞いた大きな声はまるで別人のようだと思うほど、今は落ち着いた柔らかい声だった。 「さっき……ちゃんと呼ばなかったでしょ」 「ちゃんと呼ばなかった?」 みのりは章を見上げて首をかしげた。 その仕草に章は僅かに頬を染めると、繋がっていない方の手でみのりの頬を少しつまんだ。 「俺の事、呼んでみて?」 「あ、」 悪戯に目を細める章を見上げながら、みのりは章の言いたい事を読みとった。 「……そうそう簡単に呼び捨てなんて出来ないのにぃ」 章はため息交じりのみのりに笑い、つまんだ頬を離すとするりと撫でた。 「だってね?章くん。私、双子の兄でさえ、マー君って呼んでるのよ?」 「知ってる」 「じゃあもう許して?」 困ったように微笑みながら見上げるみのり。 その表情に無意識に顔が緩む章は、それでも首を振った。 「俺だけ特別って思いたい」 「あ……、」 「俺も、みのりだけ特別、だから」 特別という言葉にみのりは「そっか、」呟いた。 クラスの女子からは返事もろくにしてくれない冷たいヤツだなんて言われているが、章はみのりに特別だ。 同じ気持ちなのを返したいと思えば、みのりの口からは自然に、 「章、」 零れ落ちるように洩れた。 「みのり、」 「私も、章だけ特別だよ?」 「ん。……誠より?」 「マー君は家族!章は……彼氏、でしょ?」 見上げるみのりの顔は真っ赤だったが、視線は真っ直ぐ章を見た。
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