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三学期が始まってすぐの日曜日に、王子カフェなる店に行った。
入店早々、壁ドンで迎えられる。
『壁ドン』は、女の子を対象にした恋愛系の読み物やゲームにおいて対象者の心を捉える展開の1つ。
女の子を壁に追い詰めた状態で、女の子の顔の横に手を付く、(更にその状態で囁いたりもする)というキュン技だ。
が。
この王子カフェでは、待ってましたとばかりに激早足で歩み寄られ追い詰められた為、恐怖しかない。
しかも、壁ドンのドンが強すぎる。恐喝よろしく耳元で壁を叩きつけられたらキュンどころじゃない。
『見つめられ、見つめ合い、ジリジリと壁に追い詰められ、彼以外のすべての選択肢を彼によって断絶されたことに焦りを感じつつ、彼の腕の接近によって強引で強烈な自分への好意を見せつけられる』のが高揚のポイントだ。
単純にドンにキュンするって訳じゃないの!
などという私の心の戯れ言が届くことはなく、更に続く、雑で形だけの『顎クイ』、『袖くる』、『肩ズン』、『耳つぶ』……。
酷すぎた。
この時体に焼き付いた五感の衝撃が強過ぎて、その後どの恋愛話を読んでも、どんなシーンでも、あの店での感覚がリアルに甦ってきてしまう。
最悪だ。この世の終わりだとすら言えた。
私の中で輝いていた愛しい2次元妄想世界を返してッ!!
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