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「最悪だ……この世の終わりだ……」
ある年の晩秋。そう書き残して、あいつは校舎の最上階から飛び降りた。
放課後、誰もいない四階の教室からは、夕暮れの綺麗な空が見えていたはずだ。
あいつは何を想い、そこから飛び降りたのだろう。
ひきこもりの俺には、想像すら出来ない。
あいつはいつも明るく、くだらない話で共に笑い、時に俺の弱音に怒り、泣き、俺の狭い世界にあり続けてくれた。
部屋に閉じこもった俺に、あいつは外の空気を運んで来てくれた、いつも。
はたからみたら、親友だった。俺だってそう思っていた。
でも、違った。
あいつは俺に一言も告げず、逝ってしまったのだから。
最初は悲しみより、怒りが来た。
あいつの死を担任からの電話で知らされた時、頭の中が真っ白になった。
そして呆然としたままあいつの葬儀に参列し、変わり果てた死に顔を見て、それとは対称的に白い花に囲まれた遺影の中で、いつもと変わらず笑うあいつを見つめる内に、言い様のない憤りが湧き上がった。
「なんで、死んだんだ。俺に何も言わずに、さっさと逝っちまいやがって。人には死ぬなとか言っといて……何、死んでんだよ!!」
焼香なんてもんは初めてで、怒りに震える指で香をつまみ、遺影に投げつけたい衝動を堪えるのに、理性をバカみたいにすり減らした。
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