第0話 静寂の行方-セイジャクノユクエ-

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 崩壊ほど一瞬で終わるものはない。どんなに多くの犠牲を払い、多くの困難で造り上げられたものでも、壊されてしまえば簡単には元に戻せないのだろう。この地に和平が結ばれた百年と言う時も、過ぎてしまえば歴史と言う積み重ねの前には刹那と言える。  嵐の前に訪れる静寂。平穏に満ちた小さな国──カヴァレッタ民国は訪れる波乱の足音に気づいてはいなかった。 「お嬢様はおいくつになられたんです?」  おろしたてのドレスを身にまとった愛らしい少女に、一人の女性が少女の目線に合うようにかがんで声をかけた。少女は自らの手を引く女性──恐らくは少女の母親だろう──を見上げて、こてんと首を傾げてみせる。照れ臭いのかしばしもごもごとしていたが、両手をつきだして片手をチョキ、もう片方をパーにした。 「……ななつ」 「まぁ、もう七歳なんですね」  女性は大袈裟に驚いてみせると立ち上がって少女の母親と世間話を始める。少女は父親と思われる男性に名前を呼ばれ、走り出した。この日は少女の両親にとって素晴らしい日であったが、それよりも何よりも少女にとって特別な日である。それは年に一度の──そして少女にとって七度目の、誕生日。  両親は誕生日パーティーを開き、大勢の人達に愛娘をお披露目した。招待された沢山の大人達が訪れ、少女を祝福する。
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