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誕生日パーティーでは、料理こそ少女の好物が並ぶ。しかしその日、少女と同じくらいの年端の子どもは一人も居なかった。そのため、大人たちの会話についていけずに暇を持て余し、日暮れであったためにこっそりとバルコニーに出ていた少女。そのせいで屋敷にいた者の中で、その音を誰よりも早く真っ先に聞いた。
この世に生を受けてから漸く七つを数える少女は今、歴史の境目に立っていた。突然の出来事に心臓が脈打ち、恐怖が少女を包む。
鳴り響く銃声。ヒトは身を守る間もなく、滑稽なほどに小さい弾丸一つで命を奪われていく。それを皮切りに、沢山の騎士がなだれ込んで殺戮の限りを尽くした。非情な剣が空気を裂いて命の詰まった赤い花を散らす。
数分前までの幸せに満ちた時間は断ち切られ、理不尽な死が笑みを浮かべる。
遠くで、逃げ回り命を乞うヒトの叫声が遠吠えの如く響いていた。再びの動乱の嘶きを、誰もが悲鳴の中に聞く。波のようにそれはうねりをあげながら近づいてきていた。危機を覚えた大人たちが死に飲み込まれないよう逃げ惑う。
豪華絢爛、輝きに満ちていた世界はたった今壊されてしまった。焦げ付いた独特な硝煙の香りと、誰かの流した血の臭い──嗅ぎなれない匂いが漂い、鼻にこびりついて離れない。
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