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「おぉ……よかった!よかった!」
目を開けると、目の前に初老の男性がいた。私はベッドに横たわっている。
横たわったまま周囲を眺めると、10畳ほどの広さの部屋で、白を基調として差し色がペールブルーのインテリアに、かわいらしいキャラクターもののぬいぐるみが飾られ、見たところ若い女性の部屋のようだった。
室内には、高級そうなスーツを着て枕元で感極まっている様子の50歳くらいのがっしりした体型の男性と、ネクタイを締めワイシャツの上に白衣を羽織り興味深そうに眺めている眼鏡をかけた30代半ばの男性、驚いたように口許を押さえている半袖のカットソーにスキニーを穿いた十代後半か二十代前半の綺麗な女の子がいた。
目の前のその初老の男性は涙ぐみ、私の右手を両手で握って、よかった、ごめんな、生き返った、という言葉を何度も交互に発した。
混乱して、私はまばたきをした。
私は"知っている"。
全部生まれてはじめて見るみたいな変な感覚だけど、目の前の男性も、この部屋も、驚いている女の子も、よく知っている。記憶にある。白衣の男性だけはまったく見覚えがない。
「あの……お父さん。どうしたの?」
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