ゾンビ愛

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あぁ私の首を咬もうとしてる!! よだれが私の首に垂れてきた。 その時、私の左手に何かが触れた。 ん?これはっ、武器かっ。 そうそう、このふわふわした感じ、 …って、これ雑巾じゃん?! あぁー、人生最後の瞬間がこれかよ。 もうダメだぁぁ。 いやっ、雑巾でも使えるっ。 私は左手でゾンビの口に、丸めた雑巾を突っ込んだ! 「ぅぐぐぐ………」 口に雑巾を入れられたゾンビは、 それを取り出そうと、必死にもがいている。 よしっ。今のうちに何か武器をっ。 私は何とか立ち上がろうとした。 ガッ――――― ドタ……… ゾンビが突然、目の前で倒れた。 「え?何?…」 頭の潰れたゾンビの前には、長身の男が立っていた。 「あ、優志(ゆうし)……」 「怜子(れいこ)、無事だったか?! どうなってんだ?この状況…、これ…ゾンビだよな…」 あぁ…よかった。母さんも義父さんもいないマンション だったけど、優志がいたんだ。 優志は、私の母の再婚相手の連れ子。 子って言っても、私と同い年なんだけど…。 とにかく、びっくりする程、男前…。 鼻も高くて、肩幅も広くて、腕の血管もセクシーで、 あぁ来たよ。長い指で私を掴もうと…。 優志は、怜子を起こそうと引っ張る。 あぁやめて、ダメ。私達は義理の姉弟なんだから。 あぁダメだっ。そんなに引っ張られたら、 心が止めらんない…。 立ち上がった私は、 そのまま優志の鎖骨目掛けて近づいた。 「お、おい大丈夫か?フラフラじゃんか」 ぐっ…… 抱き付いてしまった私を、 優志は優しく受け止めてくれた。 「マンションの外、見た?真っ暗だし、 何か変な森が広がってんだぞ?ヤバいよな…」 ヤバいよ…。完全に私はヤバい…。 あぁ…やっぱ私、優志のこと、 義父さんが連れて来て、初めて見た時から、 好きだったんだ。 義理の姉弟だって、 ずっと自分に言い聞かせてたけど、今分かった。 この温もり、匂い、皮膚の向こうの筋肉と骨に 触れるこの感じ。あぁ絶対好きだ。 大好きだ…。 あぁ…。もういいや。どうせ、この世の終わりなんだ。 キスがしたい。 私は優志の口に迫る。 「お、おいっ…」 はは、照れちゃって、モテモテだから、 女には慣れてる癖に…。 ガブリ…… へ?…… あれ??… 私は気付くと、優志の口にではなく、 首にキスをしていた。 いや!?キスじゃない。 私っ、噛み付いてんじゃん!!?
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