EX.01

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夜の峠に走り屋二人。 やることは決まってる。 370馬力を誇る、スタリオンの4G63が唸りを上げ、4つのタイヤが路面を蹴る。 レブリミットに当たる前に3速シフトアップ。パワーバンドを外さずに更に加速する。 瞬く間に、スタリオンは左の低速コーナーへと進入。 ハードブレーキングからの4輪ドリフト。 狙ったラインに寸分違わずタイヤを乗せ、スタリオンのノーズはクリップを撫でる。 繊細にしてアグレッシブなその走りは正にラリーを彷彿とさせる。 立ち上がってアクセル全開。耳をつんざく、切り裂くようなエキゾーストノートが大気を震わせる。 次の右中速コーナーまで加速する。 勢いをそのまま殺さず、スライド状態でコーナーへ飛び込み、即座に立ち上がる。 大抵の場合、ここで終わる。 一星のドラテクもそうだが、スタリオン自体の性能が飛び抜けている。 そこらにいる走り屋の車とは比較にすらならない。 それだけの車に仕上がっている。 それを操れるだけのテクニックを持っている。 故に、一星は身を震わせた。 背後に張り付いてきた車が、まだそこにいる。 ヘッドライトの光が、まだすぐ後ろにある。 そこから導き出せる結論は一つ。 後ろの車は、"スタリオンとほぼ同等のスピードで曲がった"という事。 一星は震えた。 自分に着いてこれる走り屋が現れたから。 一星は震えた。 自分と対等に走れる人間が現れたから。 一星は、歓喜に震えていた。 ぞわりと、背筋を這い上がるような感動。 ドライバーに感応するように、スタリオンは再び加速。 背後の車もそれに追随する。 スタリオンがラリーさながな、4WDの特性を活かしきったドリフトを繰り出し引き離しに掛かる。 それに対し、後方の車も最小限のスライドアングルによるゼロカウンターの4輪ドリフトで食らい付く。 スタリオンと後ろの車。2台のエキゾーストノートが溶けるように混ざり合い、官能的なサウンドとなって八重山に木霊する。 それがドライバー二人の魂を刺激し、テンションと闘争心が熱く滾らせる。 『凄いヤツに出会った』 互いに認識している確定事項。 出会ってしまった強者同士。 轟音唸らせ、路上の戦闘機は八重山峠という戦闘領域を飛ぶように駆け抜けていく。
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