EX.01

6/7
前へ
/7ページ
次へ
実に25年ぶりの再会であった。 あれからお互い歳をとったのだと、感慨深く思った。 「俺に心残りがあるとしたら、あの時の決着がついてねぇって事だ」 笑みこそ浮かべているが、男はどこか苦々しい様子で告げる。 対し、一星は愉快そうに笑みを浮かべた。 「ほっほ。なんなら今夜にでもワシとやるかのぉ?ワシは構わんぞ? 最近現役復帰してなぁ」 唐突に沸いて出た一星の提案。 はいよろこんでと行きたかったが、男にはその提案に乗れない理由があった。 男はため息を一つ溢し、口を開く。 その表情は寂しげで、悲しみが滲んでいた。 「折角のお誘いだが、無理だ。時間がねぇ」 「そうか・・・。それは残念じゃのう」 「悪いな。まぁ代わりといっちゃあなんだが、この後面白い奴らが来る。 そいつらと楽しんでくれ」 「ほぉ。お前さんがそこまで言うのなら、確かに楽しめそうじゃのう。 して、どんな奴らなのかの?」 その一星の問い掛けに、男は不敵に笑った。 右手に持ったタバコを口元に持っていきながら、男は答えた。 「なに、俺のガキ共さ。 俺の断りも無く、勝手に走り屋になりやがったクソガキ三人だ」 「ほっほ!お前さん子供がおったのか?そしてその子供達も走り屋と? 血は争えんのう!」 愉快そうに。楽しそうに、一星は笑う。 自分と引き分けまで持ち込んだ男。 その男の血を受け継ぐ3人の子供。 おまけに、これからやってくるというではないか。 これが楽しみでなくて何と言うのか。 すると、男は不意に空を見上げた。 「ああ、そろそろ時間だな。 悪いな。俺いくわ」 「ん?そうか?残念じゃのう。もっと話たかったんじゃが」 「悪いな。まぁ、そう遠くない内にまた会えるだろ」 踵を返し、手を軽く振りながら、男は立ち去ろうとする。 「まぁ待て。せめて、名前くらいは教えてくれてもいいじゃろ? ワシは鼓一星じゃ」 一星は慌てて呼び止め、男に名乗った。 あの時、お互いに名乗る事なく走っていた。 男は振り返らずに告げた。 「俺の名は、昭俊。 ───青山昭俊(アオヤマ アキトシ)だ。 ・・・じゃあな」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加