236人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
***
この前、動物ネタとしてパンダを選んだが、あれは大失敗だった。
超メジャー過ぎて、課長の方が詳しかった。
……で、今回は少しひねって、間違っても大好きだとは言わないであろう動物を選んでみた。
「課長!ヌートリアをご存知ですか?」
「唐突に何よ?実物を見た事はないけど名前くらいは知ってるわ」
知ってんのかよ…。俺、ほぼ知らないんだけど。
「ヌートリア、お好きですか?」
「別に…。基本、ネズミの仲間は好きじゃないの」
それは良かったと胸を撫で下ろしたのも束の間…課長は長々と語りだした。
「あんな特定外来生物に指定されたものを好き好む奴はいるのかしら?
世界でも日本でも侵略的外来種ワースト100に入る迷惑な動物なのよ。
おまけに写真でしか見た事ないけど、お世辞にも可愛いとは言えなかったわ。
それでも元を正せば、生態系にないものを安易に持ち込んだ人間がいけないのよ。アライグマもしかり、マングースやキョン、ハクビシンや、台湾ザル…数え切れない程の外来種が日本に居て、生態系や農業なんかに多大な被害をもたらしてるじゃない?
それなのに環境省が外来生物法を施行したのが2005年の話よ。遅いと思うわ。
外来種のせいで固有種が絶滅の危機に陥っていたりするのよ。絶滅したら他にはいないものは増やせないんだから、もっと真剣に考えてほしいわ!
自治体が駆除を執り行う場合が多いらしいけど、自治体で出来る事には限度があると思うのよ。国が大幅に予算を増やすとかもっと何か対策をしないと!
…でも、人間の身勝手で処分される外来種も可哀想よねぇ…。あいつらはあいつらなりに懸命に生きてるだけなのに…。
…中村もそう思わない?」
「は、はい。…ですよね」
「で、そのヌートリアがどうしたのよ?」
「……京都の鴨川で、カモではなくヌートリア川になるんじゃなかろうか?という勢いで大量繁殖してるらしいです」
「さすがネズミの仲間ね。ネズミ講って言葉があるくらいだものね」
「はい。…で、ご提案なんですが、僕とヌートリアを見に京都まで行きませんか?」
「別に見たくないわ」
今回も大失敗だった…。でも――
めげるな!負けるな!頑張れ俺!!
最初のコメントを投稿しよう!