生はまこと苛烈に尽きる

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  ただ、坂田のように 自分の心だったり、 他のなにかだったりを 捧げる気になれるものに 出会えなかったことは、 どこか損をした気分に なってしまう。 身軽でいることと、 なにかを背負い込むこと。 そのどちらにも、 貴賤なんて ないはずなのに。 どうしようもない 欠落感に似たこれは、 まぎれもなく劣等感だ。 乾先生との恋を 歪んだかたちで 叶えてしまったあのときから、 奥深くに巣食った闇が 今もじくじくと蝕んで、 私を苛む。 闇は、より深く 大きな闇を欲する。 光に憧れながら どこまでも、どこまでも。 そのとき、 背の高い男性が こちらに向かって 歩いてくるのに気付いた。 .
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