生はまこと苛烈に尽きる

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  義理で言っておくだけ、 という空気を 取り払って 言ってくれる坂田は、 相変わらず 優しい人のようだ。 浅海さんも それ以上は彼を 揶揄することもなく、 「じゃあ、失礼しますね」と 会釈してくれる。 歩き出す彼らの背に 手を振りながら、 私の中の 可愛い親友のことを思った。 ……こういう偶然、 なんであの子のところに 起きないんだろう。 何度も思うことだけれど、 坂田と千佳に 今さらなにか起きるなんて 思っていない。 けれど、 千佳が今こうして 坂田とばったり出会って 話でもできたなら── たとえばまた別の誰かに 向かって真摯に 歩き出せたり するんじゃないかと、 そう思ってしまう。 .
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