生はまこと苛烈に尽きる

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ カフスを外す手を じっと見つめ、 特別整えてるわけでもないのに 爪の先まできれいな 指先だなぁと 軽く嫉妬した。 桃さまがそういうすべてに 無頓着な男性だとは 思わないけれど、 指先を傷めないということは、 あらゆることに 気を遣っているから なんだろうなと 容易に想像できる。 「どうかしましたか?」 「いえ、別に」 当然のようにやってきたのは また桃さまのお部屋で、 私も特に異を唱えることなく ついてきた。 最初は事故のような ことだとしても、 二度もあったのだ。 三度目はどうあがいても 自分たちの意志だ。 今日は本当にひとりで帰る 気分ではなかったから、 それがいくらか私の意地を やわらかくはしたけれど、 言い訳も抵抗も もう無駄なだけだ。 .
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