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「夜回り先生、
ってやつだよ」
すっかり閉店した
店舗の軒先で、
傘をたたんで
坂田と夜の街を眺めた。
高校教師を
続けている彼は、
夜に繁華街をうろつく
生徒がいないかを
見回る仕事に
精を出していたらしい。
こんな雨の日に
遊び回る子どもは
いないよね、
なんて言いながらも
律儀に駅周辺を
練り歩く彼は、
昔と同じで基本的に
真面目な人だ。
「仕事中なのに、
私とこんなところで
話してて平気?」
地方公務員である
彼の都合が
つい気になって訊くと、
坂田は傘の先から
ぽたぽた落ちる水滴を
見ながらふっと笑う。
「今日の相方の先生は、
すぐ上の先輩で
友達なんだ。
だから、
ちょっとくらい平気」
「そう」
.
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