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「木枯さんは?
早く帰らなくて
平気なの」
「待ってる人とか、
別にいないから」
同級生に見栄を張るほどの
意地はとりあえず
なかったらしく、
私は正直に答えた。
「そっか。
じゃあ、
きっと仕事が楽しいのかな」
「まあね」
こんなふうに
話を切り替える坂田は
本当にスマートだと思う。
昔は失礼ながら、
顔だけの優男だと
思っていた。
けれど、
大人になれば
なるほどわかる。
坂田の優しさや
気遣いは、
本物だ。
長年男を
見る目がないと思っていた
千佳が唯一忘れられないのが
この人だということは、
ひょっとしたら
本当はあったんだろうか、
見る目とやら。
「……奥さんとは、
仲良し?」
.
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