生はまこと苛烈に尽きる

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  いつかちょっと遊んだ人が 言っていただろうか。 自分で喘いだら お前の声が 聴こえなくなるだろうが、 と。 桃さまも、 あの俗物と 同じなんだろうか。 考えながら、 私は恍惚のまま うずくまる。 「……ッ!」 がしり、と掴まれたのは 私の乱れた髪のひとふさ。 引っ張り回したいのを こらえる大きな手は ふるふると震えていて、 口に含んだ感触に 陶然として目を閉じた。 ──その部屋に 残っていたものに 囚われたままの桃さまが、 どうにも可愛くてたまらない。 口付けて、 嘗めて、 含んで、 舐って、 かぷかぷとやわく 咀嚼してしまいたい。 でも、 それができないから人は…… 例えば簡単なところで 男と女はこうして もつれていくのかも知れない。 .
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