生はまこと苛烈に尽きる

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  「私のこと、 殺してみますか」 酸素を求めて 水面に浮き上がった さかなのように、 息を継いでから ささやいた。 「……ッ、 なに、を……」 「いいですよ。 ……瑞島さんなら」 はっきりと言える。 これはわかりやすい 恋や愛なんかじゃない。 けれどこれは 彼でなければならないし、 私でなければならないはずだ。 言葉で確認したわけでは ないけれど、 なぜか私は確信していた。 「伝染してください。 私に、 その昏くて冷たいものを」 「……ッ」 桃さまが 歓喜の溜め息を漏らす。 食いちぎってしまいたい 衝動をなんとか 飲み込み、 私は浮かされたように つぶやいた。 .
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