1・桜

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その事を思い出したのは、亮輔の乗った 車が出発した後だった。 見送りのために集まった彼のチームメイトの 前で、大声で叫んでしまった私。 チームのキャプテンを務める松本さんには、 当然の如く、しっかりと聞かれていた。 「まあまあ、そんな事で無くなる威厳なんて、 元々奈緒っちには無いだろ?」 「酷っ、名誉棄損で訴えますよ!」 からかいの笑みを浮かべる松本さんに、 掴みかからんばかりの勢いで、前のめりに 立ち上がる。 「オッと!」 「わっ!」 「あっ!」 松本さんが日村君を盾にして、首を引っ込めた ものだから、危うく彼とぶつかりそうになった。 寸でのところで止まり、事なきを得て、 ホッと息を吐く。 「ごめん、大丈夫?」 「はい」 日村君が引きつった笑いを浮かべてる。 これじゃあ、松本さんの言う通り、 威厳なんてあったものじゃない。
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