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予定の時間より多少遅れる形で事務所に着いた僕が
「こんにちは」
と息を切らして挨拶すると
「やぁ、直也君
今日は少し遅かったね」
と幽亮さんが返した
「すみません、ちょっと用事が長引いて…」
僕が遅れた理由を適当に誤魔化そうとすると
「そう言えば、あの人から君に連絡があったよ」
と先に幽亮さんが話始めた
「えっ、誰から?」
「ほら、メリーさん事件の時の、今はジュエリーショップに勤めているとかいう…」
「確か…そう、篠原さんだ、篠原 麻衣さんだよ
昨日、君と話した後、たまたま亮さんに会ったから探りを入れたけど、やっぱり子どもはいないって
ちょっと僕には何の事か分からないんだけど」
篠原さん…よりにもよって幽亮さんに話したのか
「直也君…説明してくれるかな?」
そう言う幽亮さんの笑顔が少し怖い
このまま幽亮さんに隠し事をしても仕方無いので
「実は…」
と僕は悠太君の依頼や公園での話、今日の町田さん宅での出来事やその近所で聞いた事を正直に話した
「それは、不思議な話だね」
「はい、これでは悠太君が公園で会ったのは幽霊かこの世にいない人になってしまいます」
「水子の霊か…
近所の話が確かなら、生まれる前に亡くなっているから有り得る話だね」
※水子(みずこ)…本来はすいじと読むが、産まれて間もなく死んだ赤ん坊や流産した赤ん坊が霊となったものを意味する
「でも…悠太君以外の公園にいた人達もそのユウちゃんって女の子の事を見ているのだとすれば僕としては違う気がするよ」
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